グロージャンのクラッシュを筆頭に、様々なアクシデントが起こった先週のF1。今週は普段のレイアウトからアウタートラックというレイアウトに変更してレースが開催されました。
チャンピオンであるハミルトンがコロナ陽性で不参加。代役にラッセルが選ばれると、ラッセルの代わりとしてエイトキンが抜擢。火傷を負ったグロージャンに代打ピエトロ・フィッティパルディと、シートがかなりシャッフルして迎えたサクヒールGP。1周1分を切る短いサーキットにて一体どういった展開が待ち構えているか、とても楽しみにしていました。
!?!?!?
ボッタスが先輩の意地を見せるのか。それともラッセルが、16年スペインGPのフェルスタッペンのように移籍後で勝利を飾るのか。どちらにせよ、この2人のマッチレースが見られるだろうな、とレース前は予想していました。
実際、レース序盤は静かながらも2人の熱いバトルが繰り広げられていました。ロケットスタートを決め、トップをひた走るラッセルと、PPを獲ったものの追いかけるハメになったボッタス。決して派手ではなかったものの、面白い展開だなと思っていました。
しかし、エイトキンがノーズを壊して入ったVSC、SCから歯車が狂いました。
この時「念の為に…」とメルセデスは2台ともタイヤ交換を敢行したのですが、手際のミスでラッセルはボッタスのタイヤを装着してしまい、再度のピットを余儀なくされました。対してボッタスは、ラッセルに新品ミディアムを持っていかれた為、使い古したハードタイヤのままで再出発を強いられる事に…
間違ったタイヤを履かされたラッセルは、パンクがあったとはいえ、タイヤを戻しオーバーテイクをする機会を得ましたが、オンボロタイヤのままだったボッタスは、それが出来ず、無駄にストップアンドゴーペナルティ受けただけ、というメルセデスらしからぬ失態を晒す結果となりました。
このようなミス、多分ハミルトンが居なかったら起こらなかったですよね。簡単に1-2フィニッシュをし、ハミルトン不要論が出るかなと思いましたが、逆にハミルトン待望論が出てくる事になるとは思ってもみませんでした。昨年のドイツGPや15年モナコGP等、時たま現れる残念メルセデスが顔を見せたレースでしたね。ボッタスの不運さは相変わらずの事ですが、実質デビュー戦だったラッセルにもその火の粉がかかるとは…。災難にも程があります。
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悲しい。
そんな年に1回見られるかどうかのようなドタバタメルセデスを尻目に、トップチェッカーを受けたのは、来年の職場が決まっていないレーシングポイントのセルジオ・ペレスでした。
「1周目でルクレールやフェルスタッペンと絡み最後方まで下がった」という事実が信じられません。持ち前のタイヤマネージメント能力により他所を全く寄せ付けない完璧なレース運びを展開しました。正に"お見事"の一言ですよね。先週燃えてなければ3戦連続の表彰台でした。
11年のデビューから苦節10年。ウェバーの130戦を優に超す実に190戦目のレースでようやく掴んだ表彰台の頂点の座。彼の事はデビュー時から見ていたので、とても感慨深くなりました。しかし、そんな感傷的な気持ちになる一方、どうしてもザウバー時代の同僚である可夢偉選手の事が頭をよぎってしまうんですよね。ザウバーではペレスと同等の走りをしていたので、巡り合わせによれば可夢偉選手も…と表彰式を見て、そんなIFを想像してしまいました。
The moment a dream became reality...
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後、これは余談なのですが、レーシングポイントってイギリスのチームなんですね。ハミルトン不在なのにイギリス国歌を聴く事になるとは…笑。その後にドイツ国歌を聴かないと不安になる体質になってしまってるな、と感じました。
個人的殊勲賞
さて、個人的殊勲賞ですが、史上110人目のウィナーとなったペレスは勿論、初の表彰台に登ったオコンも該当するでしょう。自身にトラブルが多発するのもあって、今年はずっとリカルドがチームリーダー的立ち位置ですからね。アロンソが来る前に、1つ結果を残せたのは、彼にとって良いきっかけになれば嬉しいです。
予選で6位に入り、決勝では謎戦略で順位を下げたものの7位入賞を果たしたクビアトも凄かったですよね。戦略がもう少しまともならもっと上の順位を狙えただけに少し残念です。ですが、まだまだ腕が鈍っていない事が分かっただけでも良かったと思います。まだF1で見ていたいドライバーの1人ですね。
また、緊急の代打に関わらずあわや優勝まで持って行ったラッセルもお見事でしたし、特に大きなミス無く完走したピエトロも立派でした。
Pietro Fittipaldi will retain his place in the car for the Abu Dhabi GP 🇦🇪#HaasF1 pic.twitter.com/6EzzsKgWpN
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イケメンやなぁ。次回も頑張れ!
以上の5人が今回の個人的殊勲賞ですかね。
他にも、3位入ったストロールや、19位スタートにも関わらず1周目で9位に上がり最終的に10位入賞をしたノリスも良かったです。
その他
クビアト以外のホンダ勢に目を向けましょうか。フェルスタッペンはフリー走行から調子が良く予算も僅差で3位と、行けそうな空気は確かにありました。しかし結果は、1周目でリタイア。川井ちゃんも言ってましたが、珍しく引いたにも関わらず接触に巻き込まれる形となってしまいましたね。残念ですがそれもレースです。ボッタスにも不運が襲いかかった事で、ランキング2位をまだギリギリ狙えるというのが救いでしょうか。
ガスリーもフリー走行から絶好調でクビアトと並び好成績が期待出来ました。しかし、Q1でフロアを壊してしまい予選9位に終わると、決勝でも中々調子が上がらず11位でレースを終えました。クビアトと比較し、ペースが良くなかったのが気がかりですね…。ガスリーの事ですからアブダビでは復調してくると信じていますが、不安なものは不安です。
アルボンに関しては先週と打って変わって、予選から流れが最悪でしたね。Q1は間一髪で突破しましたが、Q2で12位に沈んでしまい、決勝でも終始集団の中での走りを余儀なくされました。エイトキンによるSCの際、ソフトタイヤに代えていたのでオーバーテイクショーが見られるのでは…と期待しましたが、アルファタウリを抜いただけに終わってしまったのが残念です。「表彰台に登れ」とは言いませんが、リカルドやサインツ辺りは抜いて欲しかったのが本音です。メルセデスも相方も居ないのに6位というのは不本意ですよね…。来週の鬼神の走りに期待です。
上記のアルボンの時に話題に出たサインツ、リカルドと言えば、完全に表彰台を投げ捨てた戦略を取ったのが残念でしたね。クビアトを警戒しての2ストップ作戦でしたが、あのままステイアウトしとけばペレスの上でリスタートを迎えられた訳で、クビアト共々勿体ない事をしたなぁと思います。アルファタウリの謎戦略に付き合わされる格好となったのは、コンストラクターズランキング争いを考えると大きな痛手となりそうです。
チームの頭(カシラ)であるビノットが久々に帰ってきたフェラーリは、悲惨なレースとなりましたね。予選にてルクレールが1アタックによる4位グリッドを獲得したのは巧かったですが、結局それが週末のハイライトでした。1周目の動きは、ベッテルに散々言われていたのにも関わらず改善しなかったのが要因ですかね…。まぁ次戦3グリッド降格のペナルティを貰っていますし、これで引く事を覚えたらルクレールはメルセデスにとってもっと厄介なドライバーになりそうなので、奮起に期待、といった所でしょうか。
ベッテルは…正直影が薄かったですね。アルファロメオと近い位置でフィニッシュしていましたが、良くも悪くもカメラに抜かれなかった印象です。フリー走行でハースに弄られたのがハイライトかな…
アルファロメオとハースも、ベッテルと同じく影が薄いレースとなりました。ジョビナッツィがQ2進出をし、ライコネンが1周目で単独スピンを喫したくらいでしょうか。まぁハースに関しては、何事もなくレースを終えられたというのが1番でしょうね。2週連続アクシデントだなんて笑えません。
ウィリアムズは、代打であるエイトキンがレースを左右するSCを出したのが一番の見所だったような気がします。まぁあのクラッシュでリタイアする事なく走り切れた辺り、エイトキンの非凡さが伺えますし、ラティフィも予選で17位に入り、決勝でもトラブルにて止まるまでは力強いレースをしていた印象です。
まとめ
という訳で第16戦の感想でした。
SF鈴鹿のように、あちこちでバトルが見られて楽しいレースとなりました。深夜2時スタートという地獄でしたがリアルタイムで見る事が出来て良かったです。
レーシングポイントが98年ベルギーGP以来のW表彰台を飾ったというのは、ジョーダンのような事ですよね。予選後にこの事を聞いても多分信じないと思います。自分がF1を見始めたのは05年か06年からなので、自分の中で現レーシングポイントのチームは、下位や中団が当たり前のチームだったんですよね。だからこそ今回の優勝はアンタッチャブルのように感じています。07年ニュルブルクリンクでのヴィンケルホック奇跡のトップ快走や09年ベルギーGPでのフィジケラの好走から長かった…
優勝を果たしたペレスは勿論の事、不運だったラッセルも、(結果は置いとくとして)今後に期待が持てる良い走りをしていました。もっと上のチームで走らせてみたいドライバーです。ですがまぁ、ボッタス共々ツイてないですよね。この不幸体質を改善出来ないと優勝やタイトルはキツそうな気がします。2人揃ってお祓いに行って欲しい。
個人的に、あのタイヤ云々の件が罰金刑だけに終わったのはちょっと解せないような気もします。ガスリーの入賞がかかってますから余計に。ただ、10年のドイツGPでしたっけ。フォースインディアが同じようなタイヤの入れ違いをして失格にならなかった前例があるので、まぁ妥当かな、と思います。何はともあれラッセル、やっぱり凄い!
Almost nothing in it at the top 😱#SakhirGP 🇧🇭 #F1 pic.twitter.com/hdAkmvxvms
— Formula 1 (@F1) 2020年12月5日
What an extraordinary race #SakhirGP 🇧🇭 #F1 pic.twitter.com/ktGauOprIe
— Formula 1 (@F1) 2020年12月6日
さて、次戦は最終戦のアブダビですね。
グロージャンの不参加は決定していますが、ハミルトンがどうなるのかという所が気になる点です。ラッセルの好走を再び見たい気もしますが、安心安定のメルセデスが恋しくなっている自分がいるのもこれまた事実です。最終戦くらい"ハミルトン×メルセデス"の最強タッグをレッドブルかフェラーリが倒す展開が見たいんですけどねぇ…