エフライの感想記

のんびりやっていきます。

山本尚貴氏が"完全な"スーパーライセンスを取得した事について思う事

2019年F1日本GP。

この舞台で日本人が約5年ぶりに公式セッションに参加しました。金曜のフリー走行1(FP1)だけだったとはいえ、久しぶりの日本人ドライバーが見られてとても嬉しかったです。今年の金曜が昨年以上に混んでいたのも少なからず影響していると思います笑。

 

その偉大なる一歩を踏み出したドライバーの名は山本尚貴。13年にフォーミュラ・ニッポン(現:スーパーフォーミュラ)のタイトルを獲得してから日本のレースでトップを走り続け、昨年はそのスーパーフォーミュラと、世界に誇る箱車日本一のレース、SUPER GTの二冠を獲り、国内最強ドライバーと形容しても差し支えない活躍を魅せました。今年もその強さは顕著で、どんなに不利な状況でも、山本選手ならやってくれると感じさせてくれる程です。

 

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さて、本題に入りましょう。

F1ファンならご存知でしょうけど、山本選手が今回FP1を走る為にはスーパーライセンス(Sライ)が必要です。それを取るには様々な制約があり、その壁を乗り越えようと、アレやコレやと色々な動きがあったそうです。調べてみて、個人的にそれがとても面白いなぁと感じたので、今回この事に関して書く事にしました。具体的にどういうことなのかというのは、以下のAUTO SPORT webさんの記事が分かりやすいので、載せておきます。

 

www.as-web.jp

 

如何でしょう?

 

飛ばした方に説明すると、Sライ取得の条件の1つにF1以外のカテゴリーで成績を残し、ライセンスポイントという予め定められているポイントを一定(40pts)以上集める必要があります。それで、山本選手がそのポイント条件を満たしているのかというのが、ホンダやレッドブルだけでなく、様々な場所で争点になったのです。

 

 

3年間有効なライセンスポイント。

始めはセオリー通り(?)の2016-2018の成績で申請したものの、付与されると考えられていたボーナスポイントが認められず、発行が許可されませんでした。ならそれでは!と2017-2019の成績(19年の分は暫定で)で再申請した結果、まだ閉幕していない、2019年シーズン(今年)のポイントが認められ、無事ライセンスが発行され、山本選手のFP1参戦が可能となりました。

 

もちろん、無事ライセンスが発行され、FP1が走れたというのは大変嬉しい事です。これで今年の鈴鹿以外でもF1を走らせる事が出来ますからね。でも、個人的にはそれに加えて、このSライ発行に関する小難しい理屈付けがF1、引いてはモタスポらしいなぁと感じました。

 

F1の細かい理屈付けは昔からF1を知っている人程分かっていると思います。「遠足にオヤツを持ってきてはいけません。バナナはオヤツに入ります」という文言があれば、「じゃあミカンはOK!」とか、「イチゴは分類上、野菜のはず。だから持っていける!」と解釈し、実行するのがF1(モタスポ)と例えれば分かりやすいでしょうか。法律関係で表すと、「刑法のように”類推適用”が存在しない」と説明するのが手っ取り早いですかね。

 

本当の遠足でそんな事をやれば、先生からキツーイお説教が待ち構えていますが、モタスポワールドでは、穴があるレギュレーションが悪いと言わんばかりに、皆その穴を突っついて来ます。勿論、たまにやり過ぎて怒られるチームがありますが、基本的には1シーズンのみOK等、制約がつくものの認められるケースが多いです。

 

これが本当、面白いんですよね。だって考えられます?「タイヤは4つ」という規定がないからと6輪のタイヤを持つ車が現れたり、「フロントノーズの上にウイングを置いてはいけない」という規定がないからとダウンフォース欲しさに謎のウイングを追加するマシンが現れるなんて。

少しでもマシンを速くする為には当然とはいえ、ここまで突き詰めていくなんて、レギュレーション考案者も難儀なものです。

 

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話を山本選手に戻しますね。

今回、彼が獲得したのは"完全な"Sライでした。"完全な"ということは勿論、不完全なSライもあります。これも上のAUTO SPORTS webさんの記事に書かれていましたが、金曜フリー走行専用のライセンスというものです。山本選手がこっちを取得しなかったのは、記事の通り、「事前に現行マシンで300km走破する」という規定を日程等の問題でクリア出来なかったからです。

 

いくらフリー走行とはいえ、公式セッションに参加するにはそれなりにマシン慣れている必要があるからと設けられた規定だと窺える"300km規定"。この距離の規定が完全なSライに存在しないのは、完全なライセンスを取得する人は、現役ドライバーか次(今)シーズンにフル参戦の見込みがあるドライバーだけだから。と考えていたからでしょう。現役はもちろん、新人ドライバーも本戦前にテスト走行等で300kmくらい余裕で走るだろうからワザワザ規定するまでもないとレギュレーション考案者は考えていたと思います。

 

しかし、今回山本選手は金曜のセッションしか走らないにも関わらず、金曜専用ではない、完全なSライを取得しました。恐らくルール考案者の予想外な方法だと考えて間違い無いと思います。一見アウトかと見られるこの方法。しかし、彼のライセンス取得のプロセスや動きはどっからどう見ても合法なんですよね。この理屈のこじ付け方をモタスポらしいと言わずに何と言えましょう。09年のブラウンGPの躍進や10年に登場したFダクトと同じ様に。いや、それ以上にクリーンに山本尚貴選手とホンダ、レッドブルはルールの抜け穴を突いたのです。

 

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恐らく来年か再来年にはこの抜け穴的な完全なSライ取得コースは封鎖されるでしょう。昨年山本選手が国内Wタイトルを獲得した時も、「1年に獲得出来るライセンスポイントは1カテゴリーのみ」と規定が変わりましたしね。前々から薄っすら匂っていた、”FIAは、F2等のFIA管轄のジュニアカテゴリーを経由しないF1昇格を嫌う”という事が本当なのか、ここから数年の動きで確信出来そうですね笑。

 

 

しかし、この前例を基に、興行的に最高に美味しいシューマッハの息子、ミックがSライを取得出来るという旨みもあるんですよね。こんな話題性抜群のドライバーをF1に昇格させないなんて事は考えられませんし、山本選手のライセンス認定も実はミックの前振りなのでは…?と勘ぐってしまいます笑。

まぁ、予測はあくまで予測なので、こんな裏話が本当にあるとは限りませんけどね。ですが、欧州優先のF1に合法的な裏口入門をした山本選手がこれからF1にどう関わっていくのかというのは一ファンとしてとても楽しみです。山本選手本人がF1参戦するのも良し。後輩の為、F1への道を整備するのに尽力するのも良し。

 

 

ホンダがいつまでF1に参戦するのかという根本的な問題もありますが、これからの山本尚貴選手の動きからは益々目が離せないですね。まぁ先ず、今は週末のSF最終戦ですけどね笑

2週間前にF1で走った地でキャシディ達との熱いチャンピオン争い、期待しています!!

 

AUTOSPORT (オートスポーツ) 2019年 9/6号 [雑誌]

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