14年ぶりにイモラにF1が帰ってきました。エミリア・ロマーニャGPとグランプリ名は変わりましたが、それでもセナやラッツェンバーガーが散り、シューマッハとアロンソの2年連続の死闘が繰り広げられた歴史あるサーキットなのには変わりありません。ムジェロ並みに狭く、またそこ以上に抜きにくいレイアウトなので、単調なレースにならないか少し不安だったものの、またここでF1が見られるのかぁ、と少し感傷的な気分になっていたのは内緒です笑。
圧倒的メルセデス
そんな単調レース現実化への不安を、現実に引っ張ってきたのがまたしても王者メルセデス。なんと今回のレースをもって、コンストラクターズタイトルを決定してしまいました。これで14年のエンジン規定変更から7連覇。強すぎにも程がある…
そして、その7連覇を支えたハミルトンが今回も強さ、そして幸運さを見せつけました。予選こそ2位に甘んじスタートでフェルスタッペンに先行を許した彼ですが、決勝では卓越したタイヤマネージメントを披露。そのお陰で3位からのオーバーカット成功させトップに躍り出ました。オコンのマシン撤去による、遅めに出てサッサと引っ込んだVSCもハミルトンの味方になりましたね。こういうツキがある辺りハミルトンは盤石だなぁと感じます。
一方、相方のボッタスは、予選でハミルトンを下し、PPを獲得する速さを魅せました。レース名に、元奥さんの「エミリア」が入っていた事が、力の源だと睨んでます笑。まぁそんな冗談は置いとくとして、何となくですが、ボッタスってイレギュラーで開催されたサーキットでは、割とハミルトンに肉薄している気がするんですよね。ムジェロもアルガルベもニュルブルクリンクも、接戦ないしはハミルトンより上を獲っていましたし。経験があまり関係ないレースでボッタスが強いのか、ハミルトンが経験から引っ張ってくるアドバンテージが凄いのか。どっちが理由か分かりませんが、ハミルトンに一矢報いるボッタスをもっと見たいな、と思います。
そんなイレギュラー開催レースに強い(偏見)ボッタス。PPから絶好のスタートを決め、このまま優勝を掻っ攫っていくんだろうな、と思っていました。しかし、ボッタスには、ハミルトンと違って"ツキ"がありません。2周目にて、1周目で接触を起こしたベッテル車からの落とし物を拾うという不運が彼を襲来。その結果、ボッタス車のバランスは崩れ、抜きにくいイモラで、フェルスタッペンに追い抜きを許してしまいました。その後、フェルスタッペンはリタイアしたので、最終的には2位に入れましたが、このデブリの件といい、前述の、オコンのマシントラブルを起因とするVSCのタイミングといい、ハミルトンと比較して運が無いなぁと感じてしまいます。個人的に、このボッタスのツキの無さは、マクラーレンやフェラーリ時代のライコネンを彷彿とさせます。辛い。
明暗分かれるホンダ勢
イモラでのホンダ勢4台は、明暗がクッキリ分かれましたね。予選、決勝通して"明"だったのはクビアトでしょう。予選こそガスリーの後塵を拝しましたが、それでも8位。決勝では終始アルボンを追い回し、SC後では豪快なオーバーテイクを披露。表彰台まで後1歩の4位という今年ベストのリザルトを残しました。SC解除後の動きは痺れましたね。デビュー時に見られたキレッキレのクビアトが帰ってきた気がしました。イモラじゃないなら3位だったかも…と思うと悔しいですが、それでも4位は立派。現状、彼は就活が必要な立場なので、良いアピールになったのではないでしょうか。個人的にはまだまだ見ていたいドライバーなので何処か拾って欲しいな、と思っています。
好成績を残した相方に対し、予選のみ"明"だったのはガスリーですね。セナのトリビュートヘルメットを装着して挑んだ今回のレースでは、予選で何と4位という好成績を残しました。開幕戦での、中団と下位の中間にいたあの時からは信じられない進歩です。しかも親玉チームのエース、フェルスタッペンと並んでのセカンドローでしたからね。ソフトスタートというハンデはありましたが、モンツァの再来を密かに…いや、大いに期待していました。
しかし、決勝はトラブルによりリタイアに終わってしまいました。スタートでは、あわやハミルトンを抜くかという蹴り出しを魅せ、その後リカルドに抜かれたものの、十分上位フィニッシュを狙えたポジションに居ただけに、残念でなりません。まぁでも、マシンの性能が1番出る予選で力強い走りを魅せましたからね。これからに期待出来る週末でした。
そんな妹チームと違い、親チームであるレッドブルは"暗"しかありませんでした。フェルスタッペンはQ2でトラブルに見舞われると、決勝でも、イギリスGPにて開催されたパンク祭りに遅れて参加、と、中々ツキのないレースでした。ボッタスより前の2位が狙えただけに残念です。まぁ彼がトリガーとなったSCが、単調なレースの最高のスパイスになったので、興行という面では良かったですが…
対してアルボンは、そろそろ首に保冷剤が付いている位涼しくなっている来ましたね…。終始クビアトに煽られると、SC解除後は単独スピン。最終的に完走した中で最下位という無念の結果に終わりました。予選でもトラックリミットを多く取られていましたし、中々に辛い週末を過ごしましたね。ムジェロ以降あまり良いところが無いのが気になります。今の状況を思うと、優勝が狙えた開幕戦が、余計に悔やまれますね。
個人的殊勲賞
先ず、前述の通り、強さを魅せたアルファタウリの2台は該当しますよね。予選でトップ8に2台とも食い込み決勝でクビアトが4位というのは天外の成績です。
また、ニュルブルクリンク以来の表彰台に登ったリカルドも凄かったですね。予選5位からスタートでガスリーを抜き、力強いペースを魅せるも、リバースストラテジーのマグヌッセンに引っかかり一時はペレスの後ろに。そんな逆風から、SCの綾もあって3位へ浮上した後、ソフトのクビアトを抑え切ってチェッカーというのは流石の一言です。今回は、前回忘れていたシューイを披露しましたしね。ハミルトンを巻き添えにしたのには笑いました。シューイはコロナに効く(適当)
IT‘S A DOUBLE SHOEY! 👟🍾 pic.twitter.com/ttZrBiHOT3
— ESPN F1 (@ESPNF1) 2020年11月1日
また、アルファロメオの2人も、力強いレースを魅せてくれましたよね。
ライコネンは、予選にて、タイム差的に「もう少しあったらQ2進出!」という所までタイムを上げましたし、決勝では、ミディアムタイヤを誰よりも(48周)引っ張り、9位入賞を成し遂げました。一方、相方のジョビナッツィは、最後尾発進にも関わらず、スタートタイヤにソフトを選択し、10周目でミディアムに乗り換えるとそのままチェッカーまで走り切り、10位入賞をもぎ取りました。
周りがハードを履く中ミディアムで走り切ったジョビナッツィに関しては、タイヤマネージメントが凄すぎですし、ベッテル、ラティフィ、マグヌッセンよりも、スタートタイヤを持たせたライコネンには、ベテランの巧さを感じました。今回のレースを見るに、開幕戦辺りの底辺感は脱しましたかね。来年もこの良き先輩後輩コンビは継続ですし、楽しみが増えました。
Start to finish and every pit in between. #Fit4F1 🇮🇹 #ImolaGP pic.twitter.com/P3DHG2XCoI
— Pirelli Motorsport (@pirellisport) 2020年11月1日
アルファロメオの2人が頭おかしい(褒め言葉)
以上の5人に加え、SC後使い古したハードでペレスやマクラーレン勢といったソフト勢を退けたルクレールを入れた6人が、今回の個人的殊勲賞ですかね。
その他
ルクレールに触れたので、相方のベッテルに目を移しますね。今回もルクレールに差を付けられた彼ですが、非常に巧いレースをしたと思います。ピット前はライコネンの前に居ましたしね。ですが、そのベッテルの頑張りは、ピット作業が全てぶち壊しました。左リアタイヤの交換に時間がかかっているな、と思いきや実は右フロントが滅茶苦茶遅いというギャグは超絶つまらない…。まぁそのお笑いにて眠気が吹っ飛んだのである意味感謝していますが、良い意味で目が覚めるレースを見せて欲しいものです。
フェラーリPU勢でいうと、ハースは良い印象はあまりなかったですね。グロージャンは、レース後に過剰なトラックリミット違反により5sペナルティを貰っていましたがそれくらい。マグヌッセンに関しては、1周目でベッテルと接触したのが全てでしたね。その後のレースペースは良く、中盤はリカルド達の壁として頑張っていましたが、頭がガンガン揺れるトラブルに見舞われて結局リタイア。「リタイアする?どうする?」というチームからの無線に対して「いや、頑張るよ。それが俺の仕事だろ?」と返したのはカッコ良かったんですけどね。報われないレースが続くなぁといった感じです。
「報われない」と言えばペレスもそうですよね。予選はQ2落ちになりましたが、ミディアムスタートというリバースストラテジーを成功させ、ベストオブザレストを確たるものとしていました。しかし、フェルスタッペンのトラブルによるSCにてタイヤ交換を選択。それが仇となり6番手に沈んでしまいました。3位が狙えただけに残念です。後からは何とでも言えますが、結果だけを見ると、トラックポジション重視の戦略が正解でしたね…。同じタイヤ交換組のクビアトに抜かれたのも悔しいところ。
相方のストロールは、まだモンツァ辺りの良い流れが戻ってきていない感じがします。今回の彼のレースは、1周目にてオコンと接触を起こしてしまった事で終わってしまいました。ポルトガルではペレスが同じ事をやってしまったものの、見事なリカバリーを魅せましたが、残念ここは抜けないイモラ。順位を満足に上げる事なく14位でレースを終えました。更に、一貴選手が頭を過ぎる、ピットでクルーを撥ねたという余罪もあります。何か1つでも切っ掛けがあれば以前の速さが戻って来そうなだけに、勿体ないな、と思います。
そんなストロールと接触したオコンは、再び不運に見舞われましたね。今回もトラブルが起こってしまいリタイアに終わってしまうとは…。走ればそこそこの位置に付けるだけに、レッドブル時代のリカルドを彷彿とさせるツキの無さには同情します。
また、「ツイてない」となるとラッセルがそうですよね。今回もQ2進出を果たしましたが、SC下で単独クラッシュを喫してしまいました。9位入賞を果たしたライコネンの前を走っていただけに残念でなりません。
Hehehe 🎯💁🏼♂️ @F1 https://t.co/cGxCJjXOfK pic.twitter.com/IsTHjimDrH
— Marcus Ericsson (@Ericsson_Marcus) 2020年11月1日
本人も認めていますし「エリクソンのせい」ですね(適当)。相方のラティフィが開幕戦とモンツァに続く3度目の11位に入っているのも、ラッセルの残念さに拍車がかかります。大雨となった19年ドイツ、大波乱だった今年のムジェロといい「ここ!」という時に居るべき場所に居ないのは「持っていない」臭がして今後が心配です。
最後になってしまいましたが、マクラーレン勢はというと、良くも悪くも印象に残っていません。ファンの方、すみません。予選では9位-10位と2台揃ってQ3に進出していますし決勝も7位と8位と、悪くは無いんですが惹きつけられる動きは少なかったかな…と思います。唯一の魅せ場は、サインツがスピンしたアルボンを神回避した場面ですね。ムジェロの再来にならなくて良かった…
まとめ
という訳で第13戦の感想でした。
抜きにくいサーキット特性に、4位スタートだったガスリーの早期離脱。ベッテル、ライコネン、ラティフィに得をさせずハミルトン贔屓と感じられるVSCのタイミングとつまらない展開だった序盤でしたが、フェルスタッペンのリタイアによるSCから一気にエキサイティングなレースとなりました。寝落ちしなくて良かったです笑。メルセデス(ハミルトン)の独走にピレリのバースト祭り、エリクソンと一貴の電撃復帰、と最近の出来事を詰め合わせたようなレースでしたね。
次戦は、こちらもお久しぶりトルコGPです。
つい最近起こった地震が気がかりですが大丈夫なのでしょうか。一刻早い復帰を祈っています。
レースに話を向けますと、イスタンブールではマッサが異様に強かった事やレッドブルの同士討ちが印象深いですね。因みに、イモラはライコネンのみが経験者でしたが、イスタンブールは11年まで開催していたので、ライコネンは当然として、ベッテル、ハミルトン、ペレスと経験者が4人も居ます。地味にグロージャンが未経験なのが意外。そんな訳で、フレッシュな面々がイスタンブールの地にてどんなレースを魅せてくれるか楽しみにしています。
まぁそれ以前に地震の被害が心配ですけどね。こればっかりは中止でも仕方ありません。