開幕前から様々な事があった2020年のF1。色々言いたい事はありますが、取り敢えず無事に終わりを迎えられて良かったな、と思います。昨年は特にコロナウイルスだったり、そのお陰で3連戦が多発したり、バーレーンでの大炎上事故があったりと散々な事が起きましたからね。死人なく終えられて良かったです。
と、言ってもスポーツ界はとても厳しいもので、皆んなでおてて繋いでらんらんお散歩出来る世界ではありません。特にF1は20前後しか椅子がありませんから、ドライバーの入れ替わり立ち代りが他のスポーツより激しく行わるスポーツです。19年はヒュルケンベルグとクビサの2人がシートを失いましたが、20年はグロージャン、マグヌッセン、クビアト、アルボンと4人のドライバーがF1から去る事となりました。多かれ少なかれ、彼らには思い入れがあるので、今回はそれを綴っていこうと思います。
ロマン・グロージャン
If you missed yesterday (HOW?) go here -> Step by Step - Romain back on the podium in Belgium: http://t.co/ZHuyS2MyNX pic.twitter.com/cQU6jeRbuw
— Renault F1 Team (@RenaultF1Team) 2015年8月24日
先ずはグロージャンから。
中堅どころと思いきや、86年生まれの34歳。2020年エントリーしたドライバーの中ではライコネン、ハミルトンに次ぐ3番目の年長者と意外とキャリアを重ねています。そんなグロージャンのイメージというと、やはり"ミサイル"という言葉を抜きには語れませんね。代表格としては12年ベルギーGPのインパクトが強いですが、それ以外にも"オープニングラップの狂人"と形容されるのも納得出来る程暴れまくっていた記憶があります。同僚が接触の少ないライコネンというのも多少なりとも影響したのでは、と今だと思えますね。
そんな彼のレースにおいて良い意味で印象深いのは13年日本GPですね。スタートでレッドブル勢を抜き最終的に3位に落ち着いたもののGP初優勝を望める走りを魅せてくれました。当時のレッドブルが今のメルセデス並みに強かった事を鑑みれば、値千金の走りだったように思えます。このレースか、ライコネンと共にベッテルを追い回した同年スペインGPが現実的な優勝機会だったのではないかと思います、多分。
ライコネンがフェラーリに行った年、14年は、悪名高いマルドナードとタッグを組みましたがポンコツルノーPUの前には暴れん坊2人の牙も抜かれてしまった印象です。ちょうどマシンも二本牙ノーズから変更するか否かで迷走していましたしね。翌年はメルセデスにPUを変更し、ベッテルバーストのラッキーでベルギーGP3位に入ったのが記憶に新しいです。まさか、これが最後の表彰台になるなんて思ってもみませんでした。
16年からは新生チーム、ハースにエース待遇として加入しましたね。そこでは同僚のグティエレスをひたすら圧倒していた印象です。デビュー戦の「This is a win for us!」という無線が滅茶苦茶印象深いです。このチームでは度々好走を魅せるも、その分ブレーキに悩まされていたイメージが強いですね。相方がマグヌッセンに代わりドライバーラインナップとしては強くなったものの、チームとしてはどんどん競争力を無くしていった記憶。
という訳で。ピケjr.と入れ替わりにF1界に入ってきたグロージャンでしたが、個人的にはルノーよりロータス、そしてハースの印象があります。まさかF1ラストランが大炎上のバーレーンGPになるとは思っていませんでしたが兎に角無事で良かったですね。また、元気にマシンを操る姿が見たいです。
ケビン・マグヌッセン
First 2️⃣ points in the bag for 2020!
— Haas F1 Team (@HaasF1Team) 2020年7月19日
Let’s take this momentum to Silverstone 👊🇬🇧#HaasF1 #HungarianGP pic.twitter.com/FByltiGU0g
グロージャンと同僚のマグヌッセンも昨季限りでF1とおさらばをしたドライバーです。ハミルトンのように、"ロンデニスの秘蔵っ子"としてマクラーレンからF1に殴り込んできたマグヌッセン。開幕戦で3位フィニッシュ(リカルドの失格により結果は2位)を成し遂げた辺り、本格的に"強い"ドライバーがやってきたな、と思ったものです。
しかし、当時のマクラーレンは落ち目も落ち目。最強メルセデスPUを搭載しても他のメルセデスPUユーザーの中で一番遅い結果を残しました。それはPUをホンダに変えても同じでアロンソに席を奪われる形で秘蔵っ子は15年シーズンはリザーブに降格しました。開幕戦はテストで軽い記憶喪失に陥ったアロンソの代打で出場したもののDNSに終わり、そしてそのまま出番が来る事なくマクラーレンを去る事となりました。
あの時はマクラーレンを離れた時点でマグヌッセンのキャリアは終わったものと思いましたね。何せF1で長生きするには、サッサとトップチームで好成績を残すか、デラロサやトゥルーリのような若手の物差し役として残るかの2択しかありませんから。当時若手であったマグヌッセンの走りをF1で見る事はもうないのかな…と寂しくなりました。
そんな逆境の中、ルノーワークスから声がかかり、その後はハースに移籍と、結果的に14年から7年、レギュラードライバーに限れば6年ものF1の世界に滞在する事となりました。マクラーレンから離脱した時から思えば随分長くその走りを見る事が出来ましたね。グロージャンに負けず劣らずのアグレッシブさを持っているマグヌッセンですが、20年のハンガリーGP等、度々光る速さを魅せていたので嫌いになれないドライバーでした。今年から挑戦するIMSAでの大活躍、期待しています。
後、これは余談ですがマグヌッセンってF1ドライバーで唯一全メーカーのV6ターボPUの走行経験があるドライバーなんですよね。グロージャンやアロンソ、フェルスタッペン、サインツのように3社の経験はあっても4つとなれば全然居ないんですよね。貴重なドライバーです。
ダニール・クビアト
How was that race?!
— Scuderia AlphaTauri (@AlphaTauriF1) 2019年7月28日
First double podium for @HondaRacingF1 since the Portuguese GP in 1992! pic.twitter.com/bgLvXO34W5
14年シーズンにリカルドのレッドブル昇格に伴い、トロロッソからのエントリーを果たしたクビアト。デビューイヤーにも関わらずこの年初開催だった母国、ロシアGPでの予選5位がひたすらに印象に残っています。
その後、ベッテルのフェラーリ移籍により2年目にしてレッドブルに昇格した辺り、順調なキャリアを積んでいる感じがしました。実際、昇格後のシーズンは、搭載しているルノーPUのロシアンルーレットに多少の依存はあったものの同僚のリカルドを上回るポイントを獲得する事が出来ました。
しかし、そんな順風満帆な中、マックス・フェルスタッペンという人物が彼のキャリアを脅かします。彼のライバルチームからの引き抜きを恐れたレッドブルは、僅か4戦目のスペインGPの段階でドライバースワップを敢行します。そのレースはメルセデスが1周目で同士討ちを喫し、皮肉なことか、フェルスタッペンが初優勝を成し遂げたレースとなってしまいました。これでレッドブル復帰は絶望的になり、加えて降格後のクビアトの速さは鳴りを潜め、シーズン後半にはガスリーを起用する為トロロッソからのクビを言い渡されてしまいました。ガスリーのSFとの兼ね合いにより暫定的に復帰したアメリカGPで10位入賞を果たしたものの後の祭り。結果的にシーズン中に3度のクビを言い渡された事となってしまいました。
この3回のクビ宣告があった次のレース全てフェルスタッペンが優勝している為、ある意味ジンクス的な意味を持っているのでは?と個人的に思っているんですよね。てな訳で21年シーズンの開幕戦はフェルスタッペンが優勝ですかね?
まぁそんな冗談は置いといて。3度の肩たたきがあったクビアトは19年シーズンにてF1にカムバックしました。「クビ切りすぎて育成が居なくなった」という何とも言えないレッドブル側の理由による復帰でしたが、また彼の走りを見れると思うと嬉しかったですね。今でこそガスリーの2位(19年ブラジルGP)や優勝(20年イタリアGP)の影に隠れましたが、トロロッソ・ホンダとして初めて表彰台に登ったのはクビアトですからね?確かに雨に翻弄されたラッキーポディウムなのは否めませんが、それでも表彰台は表彰台。フェルスタッペンと並んでの表彰式は思い出深いです。そういや、この時のドイツGPも、ガスリーが優勝したイタリアGPでもストロールがある意味鍵を握っていましたね。不思議だなぁ…
閑話休題。20年シーズンこそガスリーの後塵を拝し、アルファロメオやハース、ウィリアムズと共に表彰台に登れなかった7人のレギュラードライバー入りしてしまったクビアトですが、イモラの4位を筆頭に印象深い走りを幾つも魅せてくれた印象です。パワステの設定さえ最初から合っていればもっと上の成績を残せたのかなぁ…
シートだけでなく婚約者をもフェルスタッペンに取られたり(言い方!)、何度も降格を喰らったりと途中から順風満帆とは言えないであろうF1人生を送ったクビアトですが、それでも印象深いドライバーとして自分の中に確実に残る選手だと思います。レッドブルとの関係が切れた事で今後はある意味フリーとなった彼。日本に来て欲しい気持ちもありますが、FE等世界水準のレースでまだクビアトの走りを見ていたいです。
アレクサンダー・アルボン
🗣 "A special shoutout to all the fans in Thailand. Very proud to represent my Asian heritage and to raise the first Thai flag on an #F1 podium!" 🇹🇭 @alex_albon 💪 pic.twitter.com/6t5c2Oim8D
— Red Bull Racing (@redbullracing) 2020年9月16日
本来ならブエミの相方として日産からFEに参戦するはずだったもののレッドブルの人材枯渇によりF1に呼ばれたアルボン。デビューイヤーだった昨年は、フリー走行や予選で新人らしいミスを続けたものの、決勝ではそれを修正し何度も入賞を果たしました。特に中国GPでのピットレーンスタートから10位入賞が印象深いですね。追い抜きも素晴らしく、とても映えるドライバーだな、と思ったのが記憶にあります。
そんなアルボン。なんと1年目にも関わらず夏休み明けのベルギーGPからガスリーに変わってレッドブルに昇格しました。F1を諦めていた半年前からは信じられない程のステップアップですよね。そこでもファイナルラップでペレスを抜く等、抜擢に答える働きを見せてくれました。日本GPではフェルスタッペンと同タイムを出していましたしね。
しかし、アルボンの快進撃はここまで。ブラジルGPでハミルトンと接触し2位を逃すと、昨年の開幕戦でも再びハミルトンと絡み、優勝や表彰台を我が物とする事が叶いませんでした。そこからの彼の走りは、何度か表彰台に登るも19年のような目覚ましいものは鳴りを潜めた感じがしましたね。GPによってはアルファタウリ3台体制になっていましたし。
何処かでも書きましたが、どちらかで結果を残せていれば精神的にも楽になっていたのかもしれません。僅かF1人生2年目でリザーブ降格というのは、決して本人だけが悪い訳ではありませんが、F2同期のラッセル、ノリスと比べてステップアップが早かった分、何処と無く期待を裏切られた感があります。再来年以降、何処かで走っている姿が見たいですね。
おまけ
最後に"おまけ"として代走出走した3人のドライバーについても少し書いときましょうか。
Jack Aitken 🤝 @F1 race debut
— Williams Racing (@WilliamsRacing) 2020年12月6日
Where do you think @jaitkenracer will finish this evening?#SakhirGP 🇧🇭 | #WeAreWilliams 💙 pic.twitter.com/beimOHzTNu
先ず、サクヒールGPにてウィリアムズで走ったエイトキン。メルセデスラッセルの優勝消失の遠因となったSCを出した張本人ですが、あの一件以外は大きなミスがなく急な出走だったにも関わらず頑張っていた印象です。
🇧🇷 This weekend, Pietro will be the first Brazilian to race in Formula 1 for just over three years!
— Haas F1 Team (@HaasF1Team) 2020年12月4日
The last: @MassaFelipe19 at the Abu Dhabi GP, Nov. 2017. #HaasF1 #SakhirGP pic.twitter.com/yasL7nFrvu
そして、グロージャンの代打として最後の2戦を走ったピエトロ。流石にサクヒールGPはマグヌッセンの遥か後方を走っていましたが、アブダビGPでは遜色ない走りを魅せてくれました。SFではそこまで良い印象を持たなかったのですが、自分内評価が一気に変わりました笑。また、F1マシンを操る姿や日本で走る姿がみたいですね。
HULKENBERG: "The last seven/eight days has been crazy. This weekend I felt much better prepared. Q3 was just head down, full beans, and give it whatever I had. I’m a bit surprised to be standing here but there’s a big smile on my face" #F170 🇬🇧 #F1 pic.twitter.com/cC6P5geRNf
— Formula 1 (@F1) 2020年8月8日
ラストは、代打の神様と化したヒュルケンベルグ。1戦目(第4戦 イギリスGP)は決勝出走出来ずDNS。2戦目(第5戦 70周年記念GP)は予選3位で決勝は謎のピットストップもあったものの7位入賞。3戦目(第11戦 アイフェルGP)は急な呼び出しで予選最下位。しかしそこから巻き返して8位入賞。と、どれも話題性に富んだレースを魅せてくれました。残念ながら来年のシートもなく、再びベンチウォーマーが仕事になりますが「まだまだやれるんだ」という事は十二分に伝わってきました。
三者三様な内容でしたが、皆さん期待されていた働きは十分したのではないでしょうか。また何処かでF1を走らせる機会に恵まれる事を祈ってます。特にヒュルケンベルグには表彰台チャレンジがありますしね。
まとめ
という訳で、2020年限りでF1を去るドライバーについて色々綴ってきました。
何だかんだ言って、何年か走りを見てきたドライバーにはそれなりの愛着が湧きますからね。皆さんのご活躍を楽しみにしています。
今年、彼らと入れ替わりで入ってくるのがハースのミックとマゼピン。アルファタウリの角田くん。そしてルノーのアロンソとなっています。05年か06年からF1を見始めた身なので、またシューマッハ、アロンソ、ライコネンの並びが見られるという事実に否応にも反応してしまいますし、14年の可夢偉選手以来のフルタイム参戦となる角田くんにも大きな期待を寄せています。マゼピンは…。速い事は確実なので、上手いこと良い感じに転がってくれたらな、と思っています。
さて、こうなると居なくなる人に対しての寂しさと新たにやってくる人へのワクワクと複雑な感情を持ってしまいますね。仕方ない事だと中々割り切れないものですが、メルボルンの地を走る瞬間を見たら、そんな気持ちもあっという間に無くなるのでしょうね。あぁ…。早く開幕戦が来ないかなぁ…
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